大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和63年(オ)969号 判決 1989年7月18日

上告人 多田健治 外1名

被上告人 長嶋達郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由第1点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第2点について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件遺骨は慣習に従つて祭祀を主宰すべき者である被上告人に帰属したものとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法401条、95条、89条、93条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安岡滿彦 裁判官 伊藤正己 坂上壽夫 貞家克己)

上告人らの上告理由

第1点 控訴裁判所の判決は、上告人が申請した証人(被相続人の実妹)坂田よし子、証人金井良子を採用せず、上告人が祭紀承継の主宰者として、被相続人から指定されていないと認定したのは、採証法則の適用の誤りで審理不尽の違法な判決である。

なお坂田よし子を一審裁判で証人申請しなかつた理由は、当時坂田よし子は、病気療養中であった為に上告人と直接接触がなく、右坂田よし子の本事件に関しての認識内容に就いても上告人が知りうる状況になかった為である。

第2点 控訴裁判所の判決は、民法第897条の解釈適用の誤りがある。すなわち上告人が祭祀承継の主宰者として、被相続人から指定されていないと判断したとしても、祭祀承継の争いがある以上、祭祀の家督相続的慣習を廃止した新民法の趣旨にそって、民法第897条第2項に関わる判例に基づいた判断を示す事が妥当である。それにも関わらず、直ちに相続人を祭祀承継の主宰者として認定した右判決は、法令の解釈適用を誤った違法な判決である。

〔参考1〕 原審(東京高 昭62(ネ)1815号 昭63.4.18判決)<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例